私が学生の時に教わった構音訓練は、主には口腔体操と音読だけだった。
私が言語聴覚士養成校に通っていた時はまだ、資格ができて15年くらいしか経っていなかった。
それもあってか、講義で教えてもらえる内容が一部物足りなかった。
特に構音、嚥下の訓練法に関しては全然物足りなかった。
教えてもらった訓練法だけで、患者様の障害が治ると思えなかった。
学校は言語聴覚士養成校の中では名のしれた大学で、有名な教授もたくさんいた。
だけど学問と実技はやっぱり違うのかな、と思うところがある。
構音障害担当だった教授が書いた教科書を買わされたけど、内容が間違っていると思える所もあったし、全く参考にならなかったので、他の大学の先生が書かれた本を買って参考にしていた。
学校だけでなく、実習に出てからも愕然とした。
実習地は「リハビリテーション病院」と名の付く病院だった。
失語のリハビリはとても参考になった。
しかし、やはり構音、嚥下はそれだけ?と唖然とした。
構音障害の場合、簡単な口腔体操ひととおり、ディアドコ、音読。
基本的にはこれだけだった。
若い方には舌の抵抗訓練や、ブローイングもしていた。
バイザーは、今や失語症では論文をいくつも出して地方で名が通り、県士会の副理事長にまで上り詰めた方だけど、
当時、「構音障害は喋らせとけば治る」と言っていたくらいだった。
今思えば信じられないけど、当時はそれを信じていて、構音障害でもフリートークをたくさんしていた。
お恥ずかしい。
構音障害の経験値はまるで積めていなかった。
それから3年たち、急性期に転職した。
急性期は構音が最も多い。
こんなんではダメだ!
若くて歩ける構音障害が多いことに焦りを感じていた。
PT、OTの実習生にやってた勉強会に一緒に参加させてもらって、基本は筋肉だということを学んでいった。
痙性、拘縮、固縮等の違い、リハビリにおける考え方、
特に随意性、自動介助運動についてはとても参考になり、私の訓練の考え方の基礎となった。
その頃既に、STになり4年が経過していた。
勉強すればするほど、今までの患者様に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
でもまだまだ勉強不足。
もっと勉強すれば、今までの自分のリハはなんだったんだろう、と思う時が来る。その繰り返し。
そして、養成校も進歩してきているらしい。
それぞれの病院や施設でもレベルアップしてるんだろうな。
私がいたリハ病院でも。
それに嚥下の場合は、開口訓練なども嚥下訓練一覧に掲載されるようになって、訓練方法が増えている。
なんと今回新人が入ってきて、そこそこ訓練ができることに驚いた。
私が今まで独学で勉強してきたことを、学校や実習で教えてもらっているようなのだ。
さすがに随意性、自動介助運動の意味は教わってないみたいだけど。
わたしは自分で訓練を考える癖がついたのは良かったのかもしれないけれど、
ちょっと今の学生が羨ましいな。
でもそうやって、日本の言語聴覚士のレベルが底上げされて、経験年数を問わずみんなでレベルアップしているのかな。
スピリハの中に、向上を心がける事をやめた瞬間から堕落が始まる、だったっけ?まさにその通りだと思う。
退職するまで勉強だな。