おばちゃん言語聴覚士のボケ予防日記

脳機能、認知症予防について興味津々なおばちゃん言語聴覚士です。急性期脳外科、通所リハビリを兼務してます。まだまだ勉強中の身ですが、一般向け、同業者向けの記事、育児、家事も書くかも。コメント大歓迎です☆

言語機能とは。失語症になっても言語機能は正常範囲内?

STがよく使用する言語機能という言葉。
私個人の意見だけど、「日本語能力」に近いと思う。
構音機能と日本語能力を合わせて言語機能と呼ぶSTもいる。
日本語能力を内言語、と呼ぶSTもいる。
どこかのお偉いさんが、そのへんの呼び方を統一してくれているのかなー?

では日本語能力とは。
複雑な内容を耳で聞いてすんなり理解できるか、それとも難しい事を言われてもよくわかんない、と言うか。
漢字だらけの文書をスラスラ読んで理解できるか否か。
複雑な状況を順序立てて、聞き手に分かりやすく説明できるか否か。
などなど、日本語を聞く、話す、読む、書く能力のこと。国語の学力でもある。STは言語性IQとも言う。

1つの同じ状況を見ても、説明の仕方は千差万別、語彙が豊富な人、少ない人もいる。
難しい事でも、相手に分かりやすいように、易しい言葉を使って説明できる人もいる。それも能力。
またお喋りを始めると止まらない人も。語彙が豊富でなくても、そのような人は言語流暢性が高いと言える。

言語機能を含め、知能は正常範囲が広い。
IQ70以上で正常。



さて、言語機能の障害が、失語症である。


では、もともと言語性IQ120の人が軽度失語症状が出て、言語性IQ75になったら?

(わざわざ知能検査をしてIQを必ず測定する訳ではありません。)

STが失語症検査をして、
「正常範囲内です。失語症ではありません。」
と断言する可能性があります。
でも患者様は訴えます。
「いや、全然言葉が出なくなった…。
今まではこんなんじゃなかった…。」

STも負けじと
「それだけ話せれば大丈夫ですよ」
と言うかもしれませんね。
気にしすぎ、とか言って精神病扱いされるかもしれません。
冗談じゃなく本当にこんなSTや医師はいます。


仮に言語性IQ120の人が失語症の状況を説明するとしたらなんて言うだろう?
「発症以前は早口の医師の説明を聞いても、瞬時に理解できましたが、今はそうはいきません。メモをとらないと言われた事が頭から抜けるようです。説明をするにも例え話を用いて説明したり、人前で演説したりもしていましたが、今では到底そのような事はできないでしょう。」

とかスラスラ言っちゃうのかな?
私は言語性IQ高くないので、想像もつきませんね。

何が言いたいかというと、
失語症検査で正常範囲内であれば、確かに失語症とは言いませんが、言語機能の低下がある可能性はあります。

(うちの病院内ではナースや医師にわかりやすく伝えるために、軽度失語症がありますが正常範囲です、と報告しています。)

正常範囲内とはいえ、元々の言語機能に比べて機能低下があるとすれば、患者様の思いに寄り添いながら、リハビリをしていく必要性があります。
もちろん本人の自覚があり、リハビリを希望すれば、の話ですが。
ご家族に病前と比べてどうかを聞ければもっと確実です。


「正常範囲内ではありますが、元々の能力に比べて低下があると思われますので、リハビリをしていきましょう。
きっとご病気される前は言葉の能力がとても高かったと思われますので。」

などと励まし、説明しつつ。

特にこのパターンでよくあるのが、
軽度超皮質性運動失語の方。
SLTAで語想起だけがくっと落ちてるパターン。

ご高齢ですし、言葉がスラスラ言えなくても大丈夫ですよ、とスルーされてしまうことがあります。
一見会話は正常でも、元々はもっとスラスラ言葉が出ていたのに今は全然出なくなったと訴える方がいらっしゃいますね。

語想起や文作成など頑張っていただきます。

そういった方が見逃されず、しっかりリハビリを受けられていますように。




最後に一般人でも言語機能を高められるか、考えてみたいと思います。

私は訓練次第で高められると思っています。
言語機能は遺伝の要素も少なからずあるとは思います。
特に理解力に関しては、伸ばすのはかなり根気がいるなと感じます。
でも訓練(国語の勉強)でもいくらか上げられると考えています。
特に表出面は、人に説明をする事、これを繰り返し行うことで、その能力は高められると感じています。
やや難しいなと感じる程度の事柄だと、より鍛えられます。
私も言語機能を高めようと思って、ブログを書いています。

が、そう簡単には言語機能は高くなってはいません(^_^;)

機能性ディスペプシアは誤診で、実は食物アレルギーだったという話

STとは何も関係ありませんが。
私の単なる持病の話。

私は機能性ディスペプシアと診断されて1年ほど内服での治療を続けていました。
機能性ディスペプシアは上部症状と下部症状に分かれており、
私は子供のときから食べ過ぎた後などに、時々心窩部痛(ズキズキ)はありました。
市販薬を頓服で飲む程度で内科にはかかっていませんでした。

それが1年ほど前から胃もたれ(下部症状)が加わりました。
市販薬はあまり効かず、内科にかかり始めました。
半年前に胃カメラもして、問題ないとのことで、機能性ディスペプシア確定となりました。

でも胃もたれは月日がたつごとに酷くなってきました。
仕事中も胃もたれが頭から離れないほど。
内科でもらってる薬もあまり効いていないように感じました。

休みの日も、お腹が痛くて寝てばかり、子供に遊びに行こうと言われても痛くて行けず、つらい日々でした。
そして内科にかかり始めて1年、とうとう胃もたれの正体がわかる時が来ました!

アジの南蛮漬けを食べた時に、口の中がピリピリ!しかもその後胃もたれどころではない腹部の激痛と嘔吐で2時間布団の中で丸まってました。
でもまだアレルギーとは気づかず、機能性ディスペプシアの症状と信じていた私(笑)

その1週間後、次はアジフライを食べた時に、口の中がピリピリして、やっとアレルギーだと気づきました!一口飲み込んでしまったため、家にあったアレロックをすぐ飲みました。それでも少しお腹が痛くなりました。

次に内科受診できるまで時間があり、うなぎを食べてしまい同じ症状。もう魚が全て怖くなり、魚を食べなくなりました。
内科でとりあえず血液検査して、鮭、マグロ、アジは+1の陽性。スギ花粉は強陽性と。
食物アレルギーは血液検査できっちり結果が現れず、食べた時の反応が全てだから、とりあえず魚全般はやめた方がいい、とのこと。

ただ、魚は元々大好きなので、食べられる魚があるかどうかや、アレルギー薬の相談で、専門の病院に紹介してくれることになりました。
現段階ではここまで。

そしてなんと、魚を全く食べなくなると、胃もたれが皆無なのです!
大好きな魚が食べられないつらさもありますが、あの胃もたれから開放されて本当に良かった。
なんとなく、上部症状である心窩部痛も頻度が減ってきているような気がする。

食物アレルギーは呼吸器症状、皮膚症状、消化器症状などがあり、私の場合は消化器症状だけだったということ。
頻繁に魚を食べていて、ほぼ常にお腹の調子が悪かったため、魚が原因とは全く想像もつきませんでした。
私の父が魚屋だったもんですから、子供の時から魚ばっかり食べてたんですよね。



タイトルでは大袈裟に誤診と書いてしまいましたが、
実は食物アレルギーだったなんて、医師も気づかなくて当然と思います。
でも今後は、機能性ディスペプシアの患者さんにがいたら食物アレルギーも視野に入れて、特定の食べ物が原因でないですか、と聞いてくださる先生が増えたら嬉しいです。

もともと機能性ディスペプシアの上部症状はあり、今でも時々あるので、軽い機能性ディスペプシアもあるのかもしれません。もうそんなことどうでもいいと思えるくらいに回復したんで、そこについては確認もしていません。ただ頓服でガスターはいちおもらってます。

私みたいに機能性ディスペプシアだと思っていたら、実は食物アレルギーだったっていう方、他にもいるのかもしれませんね。

脳損傷による末梢性顔面神経麻痺と嚥下障害

橋出血の方だった。
橋損傷で重度の末梢性顔面神経麻痺は約10年のST経験で、おそらくまだ一人しか経験したことがない。(脳腫瘍やオペ後は除く)
急性期、回復期と別の病院でリハを続けてこられた方。うちの通所リハビリに来られて初対面で衝撃をうけた。
口がひょっとこだったのだ。
目はまだほとんど見たことない。眩しさや眼振、複視のためサングラスをかけたままだからだ。

今までどんなリハビリをしてたか聞くと、なんとブローイングを一番頑張ってたと。しかも健側を抑えずやってたと言う……(゚Д゚)
そりゃーひょっとこになるわー!正直呆れてしまった。市内有数のリハビリ病院だった。

さぁ、週1回20分何をするか。
今は胃ろうなので嚥下を改善させたいが、本人も周りも消極的だ。
構音、顔面をやっていくか。

末梢性だとわかれば、必ず健側を抑えてやらないといけない。そして患側の他動自動運動。
舌も抵抗運動など行う。構音訓練を少ししたらもう時間だ。

20分じゃ評価も十分にできないから、訓練しながら少しずつ評価していく。

顎関節症にもなっているので、OTに顎関節のモビライゼーションを依頼した。
すると数回で開口範囲拡大してきた。
OTに負けてられん(・・;)


脳幹損傷でも、リハビリのオーダーが出る顔面神経麻痺はほぼ中枢性麻痺だ。延髄に核のある舌下神経麻痺でおこる舌萎縮なんて見たことがない。救急には来てるんだろうが、リハビリ云々の前に救命ができるかどうかのレベルか。

脳幹損傷でも、意識障害が回復すれば、口から食べられるようになる事が多い。

上記のような方ほど重度例は稀だが、
後々は、口から食べられるようにお手伝いさせていただきたい。

現食事形態で、いつまで保証できるか

例えば当院で毎日リハビリをして、嚥下障害が少しは残るけど、トロミ無しまで回復しました、だけど、家に帰ったらほとんど運動や口の運動をしないため、退院後半年で誤嚥性肺炎になりました、
みたいなケースは多いと思う。
入院中はその食事形態で肺炎や窒息には至らなくとも、退院後リスクが上がることは普通に考えられる。
他の疾患や風邪なんかをきっかけに抵抗力、体力が落ちて、誤嚥性肺炎になる、なんてよくあると思う。
もちろん加齢もある。
入院時が80歳だとして、5年後はそれなりにリスクが上がっている。
何年後まで見通して食事形態を決めるか、
というのは非常に難しい問題だと思う。

本人や家族には、退院時になるべく説明をしている。
現在は大丈夫だけど、今後体力や抵抗力が落ちた場合に、誤嚥性肺炎に至る可能性はあります、他の病気になった時などは、適宜トロミを付ける、柔らかいもの中心に食べる、などの対策が必要になります。
わからない時はかかりつけ医に相談するか、私まで問い合わせ頂いても大丈夫です、と。
しかしここまでしっかり理解して、さらに今後も覚えておける人はほとんどいない。

前に一緒に働いていたSTで、85歳以上はみんなトロミを付ければいい!と言ってたSTがいた。

安全第一?だけどQOLも大事。

たとえ100歳であれ、トロミ無しで飲める人は飲ませてあげたいし、飲むべきだと思う。
一日数回むせたって、喀出力があれば大丈夫。

患者さんから、「病院の言う事は聞かない、自己責任でトロミなしを飲む!」
と言ってこられる場合も多々あるし、自分が高齢になった時にもそう言うかもしれない。

安全のために生きる喜びを半減させてしまうのはよくない。

それで、退院後いつまでを見込んで食事形態を決めるか。
私はなんとなく半年〜1年かなと思っている。

リハビリで治せるもんだと思ってた。

大学で勉強している間も、臨床実習に出たときも、
国家試験に受かって回復期リハビリで働き始めた時も、リハビリして治せる、と思ってた。

それは違った。
回復期リハビリに入院した脳外科疾患の患者様は、全員何かしらの後遺症が残ったまま退院される。
時々、入院してきた時と変わってない、なんて時もある。

少しでも機能的改善をさせる、少しでも会話が成立する事が増えるようにする、退院後困らないようにコミュニケーション補助手段を考える、など後遺症が残ることが前提のリハビリだった。

これに気づいた時は、それなりにショックだった。


高い入院費がかかるのに、入院してからあんまり変わってないなんて、、
自分が詐欺みたいに思えた時期もあった。
なかなか良くならない方のリハビリをしてると、急性期で働いている今でも、そんなふうに思うことはある。

患者様でも同様に、リハビリで治ると思っている人もいる。
もちろん最初の主治医からの話で、後遺症は残る、という話を聞いている人もいるけど、精神的配慮や重症度に応じて、後遺症に関する説明が不十分なこともある。
医療職、介護職経験がある患者さんや、親族や友人が脳卒中後遺症が残っているのを見たことがある人は、後遺症への理解が非常に良い。
その分、精神的落ち込みも大きいが。



だけど、後遺症は残るもんだ、と、リハビリ職員が半分諦めてしまっては、絶対にいけないと思う。
少しでも、良くなるように、できれば完治させたいという思いは、患者様と接しているうちに勝手に湧いてくるもの。

だからリハビリ職は、退職するまで、勉強が必要になってくる。
頑張らないと。

入院して出会った人

「病気をしたことはつらい。
 でもこの病院に入院してよかった。」

「病気が私を変えてくれた。
 病気をした事でたくさんの出合いがあった。
 病気をして良かった。」

こんな言葉は非常に嬉しいとともに、
あなたと出会えてよかった、と
思って頂けるような職員でありたい。


リハビリ職は担当の患者さんとは長い時間接することになる。
病気、という壁をとっぱらって親密になることも、たまに。
退院時、一緒に写真を撮って下さい、と言われることも、たまに。

回復期の方が特に、入院が何ヶ月にも及ぶので、そういったことは多かった。


今は急性期で、初めは意識がないうちからの介入になることもあるし、入院期間は2週間〜1か月間のためそのようなことは少ないが、
なんだか友達になれたよね、と思う程プライベートのやや深い話を、お互い短時間の中で共感しあえることもある。自分と境遇が似ている女性なんかは特に。

退院時は、寂しいけど、

あなたに出会えて良かった、あなた方が障害を治してくれた、克服させてくれたと思っていただけるような関わりができたら、と思う。それは難しいことでも、あるけれど。

胃カメラ後の誤嚥性肺炎から考える、長期入院による体力低下への対策は

胃カメラを飲んだあとに麻酔が長時間効きすぎて、先生に言われた食事可能時間を守って食事をしたのに、重度の誤嚥性肺炎になった人がいた。

それまでは、何の病気もない健康な70代の男性だ。胃カメラでの問題もなかった。

うちの病院ではないので、詳細はわからないが、本人曰く、
肺炎は回復し、普通食を食べられるようになるまで回復して退院したが、1ヶ月もたたないうちに再度誤嚥性肺炎になり、また入院してしまった。
2回目はなんと2ヶ月も入院した。
点滴をしてずっと寝ていた。
入院後半はSTが来て嚥下リハビリをして、
再度普通食まで回復した。
体力も落ちたから、介護保険を申請して、うちの通所リハビリに来ることになりました、と。
嚥下個別リハビリと集団体操が目的で。


胃カメラ後の咽頭麻酔で誤嚥性肺炎になったのも驚きだが、
気になるのは、長期入院による体力低下だ。

この体力低下で、この方は嚥下障害が残ってしまっていた。

私は内科ではないので、このようなケースの実情はわからない。もちろん、どこの科でも長期入院による体力低下は問題点となると思う。

廃用症候群によるリハビリの診療報酬が少ないからか、あまりこのようなケースのリハビリは進んでいない気がする。上記の方はSTよりも、むしろPTによる体力回復訓練が必要である。

内科などで長期入院となる場合は、リハビリの介入なしにしても、病棟の看護師、介護職員などで、日中は座らせておく、歩ける人は複数人で廊下を散歩していただく、
などの対策はできないだろうか。
そのような対策をしたら診療報酬、加算が付けられるとか・・・
そんな診療報酬改訂があれば嬉しい。