口腔体操でパタカ、ピチキと発音するのはナンセンス？

言語聴覚士としていつも、パパパ…タタタ…カカカ…と患者様に見本を提示します。　
構音訓練としての2モーラ反復、人により3モーラ反復はスピリハ等を使用し、ほぼ必ず行っています。

今日はデイサービス、デイケアの中で行う口腔体操の話であります。健常高齢者が発音するパタカの意義を考えていきます。
　
そもそもパタカは、評価の為に考案されたものです。
パは唇、タは舌の先、カは舌の奥の発音がはっきりできるか、速くできるか、のテストという訳です。

若者なら、パパパ…と5分間で30回以上はっきり発音できれば正常です。

それが訓練でも利用されるようになり、
最近ではデイサービスや通リハでの口腔体操でも必ずと言っていいほどパタカが行われていますね。

食事前に咀嚼、嚥下に必要な唇、舌の筋肉の準備運動をさせるためです。何もしないよりは効果があると統計も出ています。

私がデイケアで口腔体操をさせてもらう時は、ゆっくり大きい声で10回ずつパパパ…、タタタ…、カカカ…、そして速くたくさんパパパ…、タタタ…、カカカ…をやります。
一文字ずつの繰り返しですね。

そして簡単な早口言葉をゆっくりはっきりと言うことに気をつけて発音します。
みんなで歌を歌うこともあります。
もちろん首・口の運動や唾液腺マッサージ、咳込み、などもやってますよ。

さて、一般的によく実施されている、
パタカ　パタカ　パタカ、
ピチキ　ピチキ　ピチキ、
プツク　プツク　プツク、
ペテケ　ペテケ　ペテケ、
ポトコ　ポトコ　ポトコ…
みたいなやつ。

あれ、私は嫌いです。
だって楽しくないし、たいして嚥下の準備になってないもん。

最近、何かの歌の歌詞ををパタカラ〜♪に変えて歌うのもあるみたいですが、それなんかだいたいだいだいっきらい(^_^;)
それを取り入れてる方すみません。
私の個人的な意見です(-.-;)

パタカって、最小限の発声で最大限の評価を行うために効率化されたものと思っています。
そして効率的に、唇、舌の先と奥を訓練できる。
でも健常高齢者が誤嚥防止で行う場合には、効率化する必要はないです。
効率化された構音よりも、発声「量」の方が重要。なんなら機能低下予防、体力低下予防のため、15分くらい大きい声で何かを読んだり、歌ったり、してほしいものです。けっこう疲れるし、座ったまま体力維持向上に繋がります。

パタカパタカパタカ、ピチキ…、ってそんなにたくさん発音するなら、他の言葉でいい。
早口言葉や普通の歌詞での歌唱で、色々な行の発音をした方がむしろ効果あると思っています。
何なら物語の音読でもいい。

パタカはア列、ピチキはイ列しか使いません。
かといってパチケパチケ…と発音するのか？
それだとパ行とタ行とカ行しかなーい！！
次はサルメ　サルメ　サルメ……(・・;)
何だかもう意味がわかりません。
パタカ、という文字を初めて見た利用者さんは変な顔しません？

歌だってパタカラ〜♪と歌うと唇や舌に集中できませんし、何より全く楽しくない。
歌は呼吸、発声に伴う嚥下機能向上が期待されますが、読むことに意識を向けすぎて声が小さくなったら全く意味がないです。

そしてパタカパタカ、ピチキピチキ、って、文字を読むことに労力を使うんですよ。これも重要！
意味のない発音の集まりを無意味音節といいます。
無意味音節は発音自体に集中できない。
脳の言語野をより使うので、認知症予防の意味では効果的とも言えないこともないですが、読むことに意識を向けすぎて、唇に力が入ってなかったら、嚥下体操でやる意味がないのです。
若い健常者が発音を鍛えたくてする、または構音障害の方なら、無意味音節をはっきり速く言う事でも訓練効果があります。
しかしデイサービスでは誤嚥予防でやりますからね。

という訳で、デイでは、「唇に力を入れてパッパッパッと10回大きな声で発音しましょう♪」
この一文字ずつの方が唇に集中できます。

パッパッパッ等の基本練習のあとに、読むことにあまり労力を必要としない早口言葉を入れるといいですね。
読みやすい、一度聞いたらすぐ覚えられる、
赤パジャマ青パジャマ黄パジャマ
青バナナ黄バナナ茶バナナ
など繰り返しの早口言葉を私は使います。
あまりバリエーションがないので、繰り返しでないものもやりますが(^_^;)
早口言葉って言いにくい言葉を集めてるので、唇や舌の巧緻性を高められます。
そして色々な行の発音が含まれますよね。
そして楽しい。利用者さんの笑顔が見れます(^o^)

ちなみにあいうべ体操は、口の運動が効率化されてていいなと思います。
私も時間が無い時や、自主練指導で使ってます。

あくまで私の個人的な意見でした。
一生懸命パタカピチキプツクって読んでた方、それも効果はありますからね(^^)